女優の浅田美代子さんやミュージシャンの世良公則さんらの呼びか
報告の5回目となる今回は、元東京都議会議員で「犬猫の殺処分ゼロをめざす動物愛護議員連盟」動物愛護法改正プロジェクトチーム(座長=牧原秀樹・衆議院議員)のアドバイザリーボードを務めた塩村文夏さんのプレゼンテーションをご紹介致します。
東京都議会議員時代から、動物愛護の問題に現場で取り組んできました。その経験から、超党派議連のアドバイザリーボードを務めて参りました。今日は、法改正の重要なポイントである各種の数値規制についてお話しさせていただきます。
虐待には二つの種類があります。一つは殴る蹴るなどの直接的な虐待。二つ目はエサを与えないなどのネグレクトです。いま発生している業者による動物虐待の多くは、数値規制があれば未然に防げたものだと考えます。
たとえば、ペットショップの店頭でガラスケースに幼齢な子犬・子猫を入れて陳列販売している状態。これは欧米の先進国で行われている規制に照らせば、虐待にあたる可能性がある状態です。ケージの大きさは体長の何倍と定めるなどの数値規制があれば、ペットショップはいまの日本のような状態にはなりません。また、幼齢動物には免疫の問題があり、感染症などにより体調を崩しやすいと言われています。日本独自の流通モデルのなかで犠牲となる「流通死」は、毎年約2万5千頭にのぼると朝日新聞の調査でわかっています。現在の表向きの行政による殺処分の数が年間5万頭程度あることを考えると、この流通死は見過ごせる数ではありません。
つまり、ペットショップ店頭での陳列販売や繁殖業者のもとでの詰め込み飼育を、数値規制を導入することでなくしていくこと、免疫面から欧米先進国では当然行われている8週齢規制を早期に実現すること、これらがたいへん重要だと考えます。週齢規制について言えば、私は8週以上で規制すべきだとも思っています。
私が都議会議員時代の2014年に、ある劣悪なペットショップが問題になりました。日本動物福祉協会の町屋奈先生にも協力いただきながら、この問題に取り組みました。私がこのペットショップについて要望を受けた段階では、既に10年以上、問題が継続していました。私が実際にペットショップに足を運び、中に入ると、ハエのカーテンをくぐっていくような状態で驚きました。糞が堆積した鳥かごに猫たちが、狭いサークルに皮膚病の犬たちが入れられていて、販売されていました。ピンクの犬がいるから「なんだろう?」と思ったら、皮膚病のマルチーズでした。
私はこのペットショップについて議会で取り上げました。すぐに解決すると思いました。ところが、この誰が見ても虐待状態なペットショップについて、数値基準がないので「行政では虐待かどうか判断できない」となったのです。東京都は「飼育施設などの数値規制がなく、指導内容がわかりにくいところがある。数値規制があれば、明確な数字で指導や処分ができた」と弁明しまして、結局、記録が残っているだけで65回の指導を経て、ようやく業務停止命令が出ました。これは世論の強い後押しがあったからで、世論の動きがなければ、これまで10年見過ごされていたように、そのまま放置されていたでしょう。65回もの時間と手間をかけるのであれば、数値規制を定めることがいかに行政コストの削減になるか、また問題業者に対して行政がいかに速やかに取り組めるか、これは明らかです。
飼養施設についての数値規制があれば、パピーミルや引き取り屋といった問題は起きにくくなります。一方でアニマルポリスなどの制度ができても、取り締まるための数値基準がなければ、制度は今までと同じくできただけになる。数値規制を入れて、取り締まれる状況を作ることが重要なのです。
数値規制をする際に大切なのは、動物福祉が最大限に考慮された数字が入らなければならないということです。そうでなければ、動物の命、健康は適切に守れません。大量生産・大量販売・大量闇処分の日本、この悪循環を断ち切るためには、パピーミル・ペットショップ・引き取り屋などのビジネスモデルを、厳しい数値規制を導入することで変えていくことが必要なのです。命を消費するような状況を許しては、いけないと思います。
しかし環境省は審議会で、「数値化にあたっては対応が困難な高い目標では無く、最低限許容できる数値を設定する」などと強調しています。つまり厳しい数値では無く、緩い数値を入れようとしています。ですので第1部で超党派議連の先生方に何度も、「省令で数値を入れる際に、緩い数値が入るようであれば議連のほうで介入していただけますか?」と尋ねました。そういう背景があるからです。法改正で、数値規制を入れるような条文が盛り込まれたりしても、その後に省令でどんな数値が入ってくるのか、しっかりチェックしていくことが重要です。
先日、恵方巻きの食品ロスについて、「恵方巻き大量廃棄の悲劇防げるか 国が呼びかける事態に」という報道がありました。この関係の議連ができたとも聞いています。食品についてこれほど迅速に動けるのであれば、犬や猫も、需要にみあった生産・販売をするよう呼びかけなければいけません。食品ロスも大きな問題ですが、こちらは命の問題です。環境省や政治家は「ペット大量廃棄の悲劇を減らせ」と呼びかけなければいけないはずです。
最後に、動物愛護団体の皆さんには、一丸となって「重点要望」をまとめてくださるよう、お願いを致します。ほかの業界では、各団体が一丸となって、厳選した重点要望、これだけは譲れないという要望を、政治家にぶつけています。一方で動物愛護の分野では、主張がバラバラだったり、要望があまりに多岐にわたったりして、どうしても要望が通りにくい。今回の動物愛護法改正でも、超党派議連の骨子案から後退する可能性が出てきています。また5年後にも動物愛護法改正あります。皆さんが絶対に実現してほしい重点要望をとりまとめ、ぶつけていくことが重要だということを、最後にお伝えしてお話を終わりにさせていただきます。ご静聴ありがとうございました。
今回の緊急院内集会ではほかにもたくさんの方が、熱い思い、切実な願いを語ってくださいっています。引き続き随時ご報告して参ります。どうぞよろしくお願いいたします。